観客の心と笑顔を自然に引き出した国本氏の演奏

 浪曲の世界を覆した浪曲を超えた浪曲であった。
12月1日に證誠寺で行われた国本武春氏浪曲コンサート。
天候は雷が鳴り、激しい雨が降り、冬の本格的な到来を感じさせるものとなったが、国本氏の演奏はそんな天候を忘れさせるほど熱く、温かいものであった。魅せる、聴かせる、笑顔にする、そんなアットホームな演奏に誰もが自然と手拍子をし、口ずさみ、まるで予行練習したかのような一体感を感じた。

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 国本氏の三味線から奏でられるものは、過去から現代、日本各地から世界にかけて、ユーモアを交えた輝かしい世界であった。そしてその世界は、寒さで垂れていた観客の頭を自然と上げさせていた。国本氏と共に声を発し、歌い、笑っていた。いつの間にか、冬が終わり暖かい春を迎えたような、そんな会場になっていた。

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 終始、身体全体で音楽を表現し、言葉を表現し、観客の心と笑顔を自然に引き出す国本氏の演奏は力強く天まで届きそうな勢いであった。会場に響き渡る観客の声は次第に大きくなり、「笑い」から「大笑い」になり、笑顔が会場中に咲きみだれていた。
「人と人とが繋がる瞬間」。そんなことをしみじみと、そして深く感じた時間であった。

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